読書メモ:西條奈加

更新日:2023年12月03日
カテゴリー:読書 


金春屋ゴメス

物語の舞台は近未来の日本だが、そこには江戸時代に回帰したような「江戸国」があった。 鎖国を貫き、科学技術を遠ざけている江戸国を奇病「鬼赤痢」が襲う。 長崎奉行の金春屋ゴメスは、江戸で生まれ現在は日本で暮らす大学生の辰次郎を江戸に入れる。 辰次郎は幼き頃にその奇病に罹ったが一命を取り留めていた。 辰次郎の記憶を頼りに奇病の治療法を探りながら、その背後にある悪巧みを暴いていく。 (2023年11月16日)

わかれ縁(えにし)

絵乃(えの)は亭主の富次郎(とみじろう)の浮気に5年耐えたが、愛想が尽きていた。 しかし、富次郎は離縁状を書くことを拒み、絵乃は心中まで考えていた。 そんなとき、絵乃は馬喰町の公事宿(くじやど)狸穴屋(まみあなや)の手代の椋郎(むくろう)と出会う。 公事とは訴訟のことで、民事の訴訟の代行をするのが公事宿である。 狸穴屋は特に離縁を得意としていた。 そして、狸穴屋の女将の桐(きり)に見込まれた絵乃は手代として働きながら、自分の離縁にも自ら臨む。 (2023年05月18日)

隠居すごろく

巣鴨町に店を構える糸問屋の六代目主人、徳兵衛。 徳兵衛が家族を集め、隠居を宣言するところから物語は始まる。 家族の反応は徳兵衛が期待していたものとは異なっていたが、とにかく嶋屋からそう遠くない場所の古びた大きな百姓家を買い取って隠居暮らしを始める。

長年夢見た隠居暮らしであったが、商売一筋でなんの趣味も持っていない徳兵衛はすぐに飽きてしまう。 唯一の救いは毎日のように遊びに来る孫の千代太だった。 この千代太は根が優しく、困っているものに会うと、犬だろうが、子供だろうが徳兵衛の隠居家に連れて来てしまう。 動物を飼ったり、人に施しをするのが大嫌いな徳兵衛は頭を抱えるが、可愛い孫のやることなので大目に見て我慢する日々が続く。 しかし、子供はその友達と増えていき、また親たちの困りごとにも関わってしまうことになる。 初めはいやいや対応している徳兵衛だが、関わりが深くなるにつれ、徳兵衛なりの隠居暮らしが出来上がってくる。 (2022年9月15日)

隠居おてだま

隠居すごろくの続編。

前作では、さまざまな厄介ごとを通して、気の置けないものたちが集って、良い形で落ち着いた徳兵衛の隠居生活。 3年ぶりに揃った榎吉一家の揉め事や出戻り娘の縁談など、本作でもやはり厄介ごとが続く。

ただ、前作に比べると不自然な設定が多く、話の展開に違和感を覚えることがしばしばあるのは残念。 (2023年12月3日)