読書メモ:大沢在昌

更新日:2022年12月30日
カテゴリー:読書 


新宿鮫

ハードボイルド小説の新宿鮫シリーズの第1巻。

新宿署防犯科の警部、鮫島(さめじま)は新宿鮫と呼ばれている。 彼は警察のキャリア制度の落ちこぼれであり、日本の警察機構へ反逆した警察官であると周りから思われている。 そして、ある理由から危険な捜査や逮捕などを単独で行っているが、記録的な重要犯罪犯検挙率を有している。

今、鮫島が追っているのは、拳銃を密造している木津。 そして、新宿で警察官が立て続けに射殺される事件が発生する。

鮫島の恋人でロックシンガーの晶(しょう)をはじめとして、マンジュウ(死人)と呼ばれている桃井課長、ゲイバーママフォースのママ、弁護士の飛田、若いヤクザの真壁などクセのある脇役がなかなか良い。 (2022年10月3日)

毒猿 新宿鮫2

新宿鮫こと、警視庁新宿署防犯課の鮫島(さめじま)警部を主人公としたハードボイルド小説の2作目。 今回のテーマは台湾。

歌舞伎町のキャバレーの店長が殺害された。 犯人は不法就労の中国語を話すボーイ。 そのボーイの正体は毒猿(ドウユアン)と呼ばれる台湾人殺し屋で、自分を裏切った台湾ヤクザの葉威(イエーウエイ)を狙って日本に密入国していた。 そして、毒猿と軍隊で同僚だった台湾の刑事、郭栄民(カクエイミン)も毒猿を追って日本に来ていた。 鮫島は郭と一緒に、葉を匿っている石和組を探る。 (2022年11月11日)

屍蘭 新宿鮫3

新宿鮫と呼ばれる警視庁新宿署防犯課の鮫島(さめじま)警部を主人公としたシリーズの3作目。

鮫島はホテルのロビーで高級コールガールのヒモ兼元締めの浜倉(はまくら)とでくわした。 職業は別として、浜倉の男気に鮫島は好感を持っていた。 しかし、少しして、浜倉が変死した。 血管内凝固症候群という体中の血管のいろいろなところで血液が固まってしまうという症状だった。 浜倉の死を調べる鮫島の周りで、さらに失踪や不審死が続く。

鮫島がたどり着いたのは超高級会員制美容サロンを経営する藤崎綾香(ふじさきあやか)。 その周辺には、新宿署の元刑事の三塚正(みつづかただし)や看護婦の島岡ふみ枝(しまおかふみえ)などの怪しい人物が固めている。 さらに、鮫島に汚職警官の嫌疑がかかり、鮫島の捜査は難航する。 (2022年11月29日)

無間人形 新宿鮫4

今回、新宿鮫が追うのは「アイスキャンディ」と呼ばれる錠剤状の覚醒剤。 覚醒剤であることは伏せられて500円程度と安価で売られている。 元締めは、まず安く売って流通させてから価格を釣り上げることを狙っている。 販売にはヤクザが関わっているが、その元締めは謎。 元締めとそのカラクリを新宿鮫が暴いていく。 (2022年12月16日)

炎蛹 新宿鮫5

タイトルの炎はポケベルを使った発火装置による放火、蛹は南米から持ち込まれた稲を食い荒らす害虫の「火の蛹(フラメウス・プーパ)」を意味しているのだろう。 ちなみに、火の蛹は著者による架空の虫。

偶然関連した放火犯と害虫の行方を操作する鮫島だが、放火犯を追う相棒は消防庁予防部調査課の吾妻(あづま)、害虫を追う相棒は農水省の植物防疫官の甲屋公典(かぶとやきみのり)。 外国人娼婦殺害、イラン人窃盗団と中国人不良グループの抗争、南米の麻薬絡みのマネーロンダリングも関わってきてなかなか複雑。 (2022年12月30日)

氷舞 新宿鮫6

(未読)

灰夜 新宿鮫7

(未読)

風化水脈 新宿鮫8

(未読)

狼花 新宿鮫9

(未読)

絆回廊 新宿鮫10

(未読)

暗約領域 新宿鮫11

(未読)

黒石 新宿鮫12

(未読)

帰去来

警視庁捜査一課の刑事、志麻由子。 他の優秀な女性警官を押し除けて捜査一課に配属されたのは、殉職した刑事の父を持つことが理由だと、自分も周りも思っている。

由子は連続絞殺事件の犯人ナイトハンターの張り込み中の公園で、背後から首を締められる。 死を覚悟した瞬間、気がつくと、別の日本にやって来ていた。 そこには名前や姿形が同じ人々が暮らしているが、立場や関係は異なっている。 その日本では、由子は数々の手柄を立てているエリート警察官であり、多くの敵から命を狙われていた。

ナイトハンターとこの世界はどう関係しているのか? 由子は元の世界に戻れるのか?

このように解説すると、よくあるパラレルワールドを題材にしたSFと思われるだろう。 もちろんその要素は強いのだが、刑事ものが絡められていて面白い。 もう一つの世界は戦後の日本のような雰囲気を出していて、よく考えられた小説である。 (2022年3月10日)

晩秋行

中目黒駅の近くで居酒屋を営む円堂(えんどう)に、那須の別荘地に住む親友の作家の中村充悟(なかむらじゅうご)から電話がかかってくる。 中村の知人が那須で赤のスパイダーを見かけたそうだ。 スパイダーとは、1957年から63年にかけて104台が作られたフェラーリ250GTカリフォルニア・スパイダーで、現在であれば20億円くらいの価値がある。 そのスパイダーを所有していたのは円堂と中村が働いてた二見興産の二見会長。 二見会長はバブル時代に地上げの神様と呼ばれたが、最後は千億円以上の負債を抱えて失踪している。 その時一緒に消えたのが、円堂が結婚を考えていた六本木のクラブのホステスであった君香(きみか)であった。 30年経った今もまだ君香を忘れられていない円堂は君香を探すためスパイダーの行方を追う。

途中、何人かの女性が登場するが、みんな円堂に好意を持つ。 60歳を超えたおじさんの願望を描いたような展開だ。 (2022年11月6日)