読書メモ:宮部みゆき(時代小説)

更新日:2024年01月08日
カテゴリー:読書 


本所深川ふしぎ草紙

本所深川の岡っ引き、回向院の茂七がキーパーソンの短編集。 しかし、茂七が主人公というわけではなく、それぞれの話に主人公がいる。 そこが「初物語り」とは違うし、稲荷寿司屋台のおやじも出てこない。 片葉の芦、送り提灯、置いてけ堀、落葉なしの椎、馬鹿囃子、足洗い屋敷、消えずの行灯の7編が収録されている。 (2022年5月28日)

かまいたち

宮部みゆきお得意の江戸の捕物・謎解き短編集。 表題作のかまいたちの他に、師走の客、迷い鳩、騒ぐ刀の4編が収録されている。

仕掛けられた謎がどれも逸品だが、かまいたちではサスペンス調、迷い鳩と騒ぐ刀ではファンタジー調が加わる。 特に、迷い鳩と騒ぐ刀が面白く、どちらも一膳飯屋の姉妹屋のお初が実質的な主人公。 長兄で目明しの六や蔵親分や次兄で植木職の直次と一緒に謎を解く。 (2022年5月29日)

幻色江戸ごよみ

宮部みゆきお得意の江戸時代の庶民の生活を描いた短編集。 本書には12編が納められており、それぞれは短い。 すべて独立した話で、関係はないが、いずれも怖さや哀れさを感じるエピソードになっている。 (2022年6月16日)

初ものがたり

本所深川一帯をあずかり、「回向院(えこういん)の旦那」と呼ばれる岡っ引の茂七(もしち)が主人公の短編集。 岡っ引の話だが、派手な捕物ではなく、謎解きもの。 そして、タイトル通り、季節ごとの初物が絡む。

お勢殺し、白魚の目、鰹千両、太郎柿次郎柿、凍る月、遺恨の桜の6編が収録されている。

脇役で出てくる稲荷寿司屋台のおやじや霊感坊主の日動(にちどう)もよい味を出していて、物語にふくらみを持たせている。 ただし、おやじの正体は判らぬまま終わってしまう。 そのうち続編が出るのかな? (2022年5月21日)

ぼんくら

ぼんくらなのは本所深川方の同心、井筒平四郎(いづつへいしろう)。 平四郎の見回り先の鉄瓶長屋で八百屋の太助が殺された。 その事件を契機としたかのように、厄介ごとが続き、店子たちが次から次へと鉄瓶長屋を去っていく。 平四郎は、長屋の地主である築地の俵物問屋の湊屋総右衛門が絡んでいるのではと考え、中間の小平次や養子候補の甥の弓之助、幼馴染で隠密周り同心の黒豆らの力を借りて、柄にもなく探索する。

宮部みゆきの時代小説は数冊読んだが、登場人物が重なっていて面白い。 本所深川ふしぎ草紙や初ものがたりに出てくる本所深川の大親分の茂七をはじめとして、子宝船に出てくる茂七の一の子分のおかっぴき政五郎やなんでも記憶するおでこなど。 それらの小説を読み直してみようかなと思ってしまう。 (2024年1月8日)

日暮らし

未読

おまえさん

未読

あかんべえ

12歳のおりんは、新しく料理屋を立ち上げる両親の太一郎と多恵に連れられて海辺大工町の家へ引っ越して来た。 そこでおりんは高熱を発して、死の淵をさまようが、三途の河原で不思議な体験をする。 病からなんとか生還したおりんは、家に住み着いている「お化けさん」の幻之介、おみつ、笑い坊、お梅、おどろ髪が見え、話ができるようになっていた。 料理屋に次々と災難が降りかかる中、おりんは5人が亡者になった謎を解く。 (2022年6月19日)

桜ほうさら 上下

主人公は、深川の北長堀町にある富勘長屋の古橋笙之介(ふるはししょうのすけ)。 深川佐賀町にある貸本屋の治兵衛(じへえ)から写本の仕事をもらって生計を立てている。

彼の生地は上総国搗根藩(とうがねはん)で、父は宗左右衛門(そうざえもん)、母は里江。 兄の勝之介(かつのすけ)は藩の道場の師範代を務めるほどの武士である。 一方、笙之介は気が弱く、武が苦手だったが、文を得意とし、それを活かして出世の道を目指していた。 しかし、父に賄賂を受け取った疑いが掛かる。 本人にも自分が書いたとしか思えない手跡の証拠の文書が出て来たのだ。 父には身に覚えのないことであったが、言い逃れができず、最後は切腹して果てた。 その後、江戸藩邸の留守居役、坂崎重秀の名を受けて、笙之介は江戸で偽の文書を作成したものの探索を始める。

ある日、笙之介は川っぷちの桜の木の下で、顔と体の左半分に赤痣がある娘、和香と出会う。 和香の協力を得ながら、偽文書の謎や藩内の陰謀を明らかにしていく。 (2022年6月24日)

震える岩 霊験お初捕物控

南町奉行の根岸が江戸の面白い話を集める耳袋。 それを手伝っているのは、この世のものでないものが見えるお初。 お初は与力見習の古沢右京之介と組んで、深川の長屋で死人が生き返る死人憑きを調べる。 そして、それは百年前の忠臣蔵の因縁へと話は展開していく。 (2023年11月23日)

天狗風 霊験お初捕物控2

未読

きたきた捕物帖

深川元町の岡っ引き、文庫屋の千吉親分がふぐにあたって死んだ。 子分は何人かいるが、誰にも十手は継がせないというのが親分の遺言である。 親分の本業は、読本(よみほん)などを入れる文庫を作って売ることで、親分が考案した華やかな色柄の朱房(しゅぶさ)の文庫は大人気だった。 その家業は一の子分の万作(まんさく)夫婦に任せ、一番下の子分の北一(きたいち)は万作夫婦から文庫を卸してもらって売り歩くことを続けることになった。

本書のタイトルの「きたきた」の一つ目の「きた」は北一の北であろう。 すなわち、北一が主人公で物語は進む。

北一の周りには、千吉親分の盲目の女房の松葉(まつば)、親分と実根だった深川の差配人の富勘(とみかん)、欅屋敷の用人の青海新兵衛(おうみしんべえ)、親分が仕えていた同心の沢井蓮太郎(さわいれんたろう)など多彩な人が集っている。 十手を持たぬ北一だが、みんなの助けを借りながら、謎解きと捕物に関わっていく。

もう一つの「きた」は喜多次(きたじ)の喜多であろう。 喜多次は扇橋町の湯屋、長命湯の前で行き倒れになっているところを助けられ、そのままの釜焚きになった。 一見は骨と皮だけの薄気味悪い少年だが、実は腕が立ち、頭も働く。 北一に恩ができた喜多次は、北一の謎解きを影から助ける。 ところで、喜多次は、「初物語り」に出てくる稲荷寿司屋台のおやじに関係しそうで、今後が楽しみ。

ふぐと福笑い、双六神隠し、だんまり用心棒、冥土の花嫁の4編が収録されている。 (2022年5月22日)

子宝船

「きたきた捕物帳」の続編。 主人公は深川北永堀町の富勘長屋に住む北一(きたいち)。 頓死した岡っ引の千吉(せんきち)親分から家業であった朱房(しゅぶさ)の文庫を引き継いだが、十手は引き継いでない半人前。 しかし、岡っ引の大親分の本所回向院裏の政五郎(まさごろう)、検視の手練れである本所深川方同心の沢井蓮太郎、なんでも覚えていて何でも思い出せるおでこの三太郎などの新しい登場人物に助けられながら、江戸の怪事件を解決していく。 謎解きも面白いが、随所で語られる江戸の風情が良い。

ストーリーには直接関係ないが、政五郎の親分として、「本所深川ふしぎ草紙」と「初物語り」に登場した回向院の茂七(もしち)の話が出てくる。 また富勘長屋は「桜ほうさら」の主人公古橋笙之介が住んでいた長屋である。 それぞれが繋がっていて面白い。 (2023年06月18日)