読書メモ:今野敏 任侠シリーズ

更新日:2022年09月11日
カテゴリー:読書 


1 任侠書房

任侠シリーズの第一巻。

任侠道を貫く阿岐本組(あきもとぐみ)。 組長の阿岐本雄蔵、代貸(だいがし)すなわちナンバーツーの日村誠司と4人の若い衆からなる小さなヤクザ一家。 若い衆は、一番年上で貫禄のある三橋健一(みつはしけんいち)、ハッカーの市村徹(いちむらとおる)、元暴走族の二之宮稔(にのみやみのる)、やたらに女にモテる志村真吉(しむらしんきち)。

突然、組長はいつもの思いつきで、倒産しかけている神田の出版社、梅之木書房の社長になると言い出した。 一緒に役員として乗り込んだ日村の前に次から次と厄介ごとが転がり込む。 個性豊かなヤクザたちと出版社の社員がいつの間にかタッグを組んで道を切り開いて行く。 (2022年7月8日)

2 任侠学園

今回、阿岐本組が立て直すのは私立高校。

三鷹にある井の頭(いのかしら)学院高等学校。 塀にはスプレーの落書き、グラウンドは雑草で荒れ放題、窓ガラスは割れたままで放置されている。 高校ものの定番、クレーマー母親軍団や学園を牛耳る理事長がやはり出てくる。

荒廃した高校を立て直し、名門校にするため、いつものように組長に振り回されながら、日村たち組員が悪戦苦闘する。 (2022年7月11日)

3 任侠病院

今回、阿岐本組が立て直すのは病院。

世田谷にある駒繋(こまつぎ)病院で、内科・消化器科・外科・整形外科・皮膚科を持つ地域の総合病院。 しかし、建物は汚れ、職員にはやる気を感じられない暗い病院だった。

その原因はシノ・メディカル・エージェンシー。 病院内の諸事を業務委託している会社で、そのバックには関西系の暴力団、耶麻島組がいる。 その委託業者に高いマージンを取られて病院の経営が悪化しているのだ。

いつものように、日村たち個性豊かな組員が組長に振り回されながら、病院の再生に取り組んで行く。

なお、最後に組長の兄弟分が登場して丸く収まるっていう、水戸黄門の印籠のようなオチは今回はない。 あんまり続くとマンネリするからな。 (2022年7月12日)

4 任侠浴場

今回、阿岐本組が立て直すのは銭湯。

赤坂六丁目にある古い銭湯、檜湯(ひのきゆ)。 家族経営の小さな銭湯で、主人の佐田知己(さたともき)は廃業するかどうかを悩んでいるようだった。 赤字だが、税金の優遇措置や補助金で経営は続けて行けるため、お金以外にも悩みがると組長は見抜く。 そして、家族のやる気を引き出し、再建に向けて、いつものように組員たちが動き出す。

銭湯の再建を始める前に、銭湯の親玉、道後温泉へ組員全員で勉強に行くというのが面白い。 (2022年7月20日)

5 任侠シネマ

今回、阿岐本組が立て直すのは映画館。

北千住にある老舗のミニシアター、千住シネマ。 この再建に乗り出すが、千住シネマ自体には直すべきところはなかった。 問題は、千住シネマを経営する千住興業の中にあった。 それをいち早く見抜いた組長に従い、組員たちが動く。

おまけだが、1巻から出ている脇役のマル暴刑事の甘糟達男(あまかすたつお)が目立っている。 童顔、小柄で、いかにも気が弱そうな刑事だが、今回は男気を見せる。 (2022年7月14日)

6 任侠楽団

今回、阿岐本組長や日村たちが助けるのはイースト・トウキョウ管弦楽団。

公演が近いのに若手とベテランが対立していた。 その対立を収めるよう頼まれたは阿岐本組はコンサルタントとして楽団に入っていく。 そんな最中、新人の常任指揮者、エルンスト・ハーンが何者かに襲われる。 傷害事件を捜査するため、警視庁捜査一家の碓氷(うすい)刑事がやって来た。 碓氷は勝手に阿岐本や日村たちと協力体制をしいてしまうが、良いチームとして動いていく。

途中から犯人は予想できてしまうし、最後の自白も簡単すぎるが、そういうところは気にせず気楽に読み切ってしまえるのが良い。 (2022年9月11日)