読書メモ:今野敏 隠蔽捜査シリーズ

更新日:2022年10月23日
カテゴリー:読書 


1 隠蔽捜査

警察庁幹部の竜崎伸也を軸として、殺人事件、社会正義、官僚組織、家族といったキーワードをうまく絡ませた硬派な物語。 初めは取っ付きにくい感じがするが、読み進めるとハマる。 そして、最後は清々しく終わってくれるので、安心して読める良書!

2 果断

警察庁から左遷されて大森警察署の署長になった竜崎が、立てこもり犯罪の真実を明らかにしていく。 署内や警察庁といった警察内部の人間関係がうまく織り交ぜられていて面白い。 また、水戸黄門的な気持ち良さをしつこくない程度に散りばめてあるのもうまい。

3 疑心

米国大統領訪日の警備とそれに絡んだテロの阻止。 相変わらず硬派な題材だが、竜崎の女性部下への恋心の描き方がしつこく、米国SPの言動も不自然。 無理に話を盛り上げようとしている感じがし、ミーハーで底が浅い残念な一冊。 この週末の選書はハズレ続きだ。

3.5 初陣

スピンオフの短編集。 本編の主人公竜崎の同期で幼なじみの伊丹刑事部長の目から見た隠蔽捜査シリーズ。 結局は竜崎の人となりと活躍が前面に出てしまっている。 スピンオフなのだから、もう少し伊丹を主軸にした方が面白いと思うのだが。 (2020年6月1日)

4 転迷

主人公はお飾りでない警察署長、竜崎。 現場の刑事ではなく、警察官僚の視点で捜査を描いていく、珍しい警察小説。 このシリーズは伏線が分かり易すぎるきらいがあるが、娯楽としてはこのくらいがちょうど良い! (2020年3月17日)

5 宰領

警察庁キャリアだが、降格人事で所轄の署長になった竜崎。 今回は衆議院議員の誘拐事件&運転手の殺人事件に挑む。 主人公ご都合主義はあいかわらず強過ぎる気はするが、読後のすっきり感が良いので許せる! (2020年4月2日)

5.5 自覚

3.5巻に続くスピンオフの短編集。 3.5巻では伊丹刑事部長のみの話だったが、今回は竜崎に関わりのある7人の警察官の話からなる。 それぞれが立場に応じた困難に見舞われる。 しかし、結局は竜崎からの直接あるいは間接的な助言に助けられて解決するという展開で、竜崎を引き立てるための話ばかりで物足りない。 深掘りできる脇役が揃ってこそ、主人公が映えると思うのだが。 (2020年7月6日)

6 去就

警察官僚から所轄署長に降格された竜崎。 普通なら辞職するところだが、署長として活躍している。 今回のテーマはストーカー殺人。 トリックはさほど練られてはいないが、このシリーズの見所は警察内部の人間関係。 最後に清々しく終わるところが、水戸黄門っぽい。 (2020年6月1日)

7 棲月

降格人事で警察署長になった竜崎、 今回は不良グループの殺人事件とサイバー犯罪に挑む。 スピンオフも含め9冊目になるとさすがにマンネリ感が出てくる。 人物描写も薄っぺらで、事件の設定も安直。 しかし、水戸黄門的なお約束なまとめかたは娯楽小説としてはアリ。

第7巻の読感は正直イマイチ。 第1巻から読んでいるから慣れで次巻も読もうと思うが、この巻から読み始めた人には評価されないのでは。 と他人事ながら心配していたら、第8巻は市立図書館で150人待ち! 期待大だな。 (2020年6月3日)

Kindle版 空席

ちょっと時間が余ったので、鹿児島空港での乗り継ぎ時間中にダウンロード。 竜崎が大森警察署から異動になった日に起こった事件を残された署員たちが解決する短編。 ストーリーも展開も陳腐で残念。 1時間もったいなかった・・・

8 清明

警視庁大森警察署の署長として活躍した竜崎伸也は神奈川県警の刑事部長へ異動となる。 新シリーズの始まりって感じだが、新たな布陣の描き方は表面的で、あまり新鮮味はない。 これまでのテーマは降格人事や所轄署の立場の弱さだったが、これからは警視庁と神奈川県警の確執っぽいな。

ストーリーは安定の現代版(チャンバラなしの)痛快活劇。 竜崎に都合良く展開していくところは相変わらずだが、肩肘張らずに気楽に読める。 (2020年11月23日)

9 探花

横須賀で刺殺遺体が発見され、横須賀署に捜査本部が設置された。 神奈川県警刑事部長の竜崎伸也(りゅうざきしんや)は捜査を現場に任せようとするが、白人男性が逃走したという目撃者が現れる。 もし米軍関係者が被疑者だとすれば、日米地位協定が絡み事件は複雑になる。

福岡県警から異動してきたばかりの同期の八島圭介(やしまけいすけ)警務部長の策により、竜崎は捜査本部に赴き、現場に関わっていく。 案の定、署長の安孫子真一(あびこしんいち)や板橋武(いたばしたけし)捜査一課長らからは煙たがられるが、いつものように竜崎を中心に捜査は進展していく。 (2022年10月23日)