読書メモ:貴志祐介 防犯探偵・榎本シリーズ

更新日:2020年08月12日
カテゴリー:読書 


1 ガラスのハンマー

防犯コンサルタントの肩書を持つが、どことなく(いや、絶対)怪しい榎本圭。 オフィスビルの最上階で発生した密室殺人事件の謎を解く。 ワトソン役は弁護士の青砥順子。 この二人が中心の話が前半で、後半は犯人の視点で進む。 後半は短いが、内容が濃く、人物描写も深いので、感情移入させされる。 後半に比べると前半はのらりくらりだが、おそらく敢えてだろう。 (2020年7月5日)

2 狐火の家

セキュリティショップの店長であり、防犯コンサルタント(しかし、裏の顔を持ってそうな)の榎本圭が密室の謎を解き、犯罪を暴いていく短編集。

仮説を立てては、検証し、潰していく。 これを繰り返して、トリックの真相に近づいていくスタイル。 現実の謎解きならこうなるのだろうと思うが、小説としては冗長に感じる。 もちろん、それを楽しむように著者は考えた上のことだろうが。

前作は長編だったので冗長さが目立って途中飽きそうになった。 でも、本書のような短編だとそれがだいぶ弱まっているので、テンポよく読み進められて面白かった。 (2020年7月11日)

3 鍵のかかった部屋

セキュリティショップ店長で、防犯コンサルタントという肩書だが、明らかに裏の顔を持つ榎本圭シリーズの短編集第2弾。 いつものように密室殺人の謎を解き明かし、犯人を暴き出す。 いずれの話も、そんなにうまくいくのかあ!?と思わせられるトリックだが、それが娯楽小説だ! それにしても、相棒役の弁護士の青砥順子のキャラがどんどんアホっぽくなっていっている・・・第1巻ではもう少し知的だった気がするのだが。 (2020年7月17日)

4 ミステリークロック

防犯探偵・榎本シリーズの第4巻。 短編集としては第3巻。

密室で禁酒中のヤクザを自殺に見せかけて殺す話、鏡の国のアリスを題材として侵入・逃亡を不可能にした密室の話、時計をうまく使って密室を作り出す話、大海原に密室を作る話と今回も様々な密室殺人が並ぶ。

1編目の自ら進んで銃口を自分の口に向けさせるトリックは一品。 その痕跡の残し方も素晴らしい。 このシリーズとしては珍しく、榎本圭の目線のみでほぼストーリーが展開し、普通の感情が描かれている。

2編目のガラスを多用したトリックは面白いが、ルイス・キャロルの研究家、萵苣根功はいらんのでは。

本書のタイトルにもなっている3編目のミステリークロックは200ページ超え。 短編としては長いが、さすがにトリックがよく練られている。 込み入っているが、ところどころで整理されるようになっているので、読みやすい。

4編目のコロッサスの鉤爪はやりすぎ感がある。

それにしても、榎本桂の裏の顔は、前巻までは「怪しい」で留められていたが、本館では明らかに泥棒になってるなあ。 (2020年8月12日)