読書メモ:アンソニー・ホロヴィッツ(山田蘭 訳)

更新日:2022年11月27日
カテゴリー:読書 


カササギ殺人事件

まずは上巻。なかなか読み応えがある。 1955年、英国の田舎。密室の屋敷で家政婦が階段から落ちて死んだ。 余命わずかな探偵が捜査を始めると、一見のどかな村の複雑な人間関係が次第に明らかになっていくが・・・ (2020年5月29日)

下巻では話が一転する。 実は上巻で語られていた話は作家アラン・コンウェイの最新作。 そして、アランは塔から落ちて死に、結末の原稿は行方不明に。 担当編集者が原稿とアランの死の真相を探るが、それは上巻の推理小説に大きく関わっていく。 複雑だが、巧みな構成だ! (2020年5月31日)

メインテーマは殺人

著者のアンソニー・ホロヴィッツは作中にも作家・脚本家として出てくる。 元刑事のダニエル・ホーソーンがある難事件を解決する一部始終を本にするためだ。 出来上がった本の途中に、アンソニーの執筆の様子や裏話が挿入されている感じの構成になっている。 ホーソンとアンソニーの関係はホームズとワトソンの関係になぞられていると言ってよいだろう。

ホーソーンはある理由で警察をクビになったが、その捜査能力を買われて顧問として警察に協力している。 今回、ホーソーンが追うのは殺人事件。 資産家の老婦人ダイアナ・クーパーが葬儀屋に自分の葬儀の依頼に行った。 生前に葬儀を準備しておく人は珍しくないが、ダイアナはその相談の数時間後に絞殺された。

ダイアナは約10年前に眼鏡を忘れたまま車を運転して、幼い双子の兄弟をはね、そのまま逃亡している。 兄弟の一人は即死、もう一人は重度の障害をおった。 そして、観念して自首してきたダイアナは最終的に裁判で自由の身となっていた。 今回のダイアナ殺人はこの事故が関わっているのであろうか?

話の筋とは直接関わらないが、スティーブン・スピルバーグやピーター・ジャクソン(ロード・オフ・リング三部作の脚本、制作、監督)とのやりとりが面白かった。 (2022年8月14日)

その裁きは死

元刑事のダニエル・ホーソーンと著者のアンソニー・ホロヴィッツのコンビが殺人事件を捜査するシリーズの第2作目。 メインテーマは殺人の続編。

殺されたのは離婚専門弁護士のリチャード・プライス。 殺害現場には緑のペンキで182という謎の数字が書かれていた。 真面目で正直と言われていた被害者だが、捜査が進むに連れ、仕事や私生活上で彼を殺す動機を持つ人たちが増えていく。

探偵小説の定番は優秀な探偵とそれを引き立てる間抜けな警部だが、前作のメドウズ警部に代わり、今回はカーラ・グランショー警部が登場する。 グランショー警部はメドウズ警部と同様にホーソーンを敵視しているが、グランショー警部はむしろホロヴィッツを標的にして無理難題を言ってくる。 そして、それを見て見ぬふりのホーソーン。 振り回されるホロヴィッツだが、前作のように、自分でも犯人と犯行手口を推理する。 今回はホーソーンやグランショー警部を出し抜けるのか? (2022年9月16日)

ヨルガオ殺人事件

カササギ殺人事件の続編。

前作で編集者を辞めたスーザン・ライランドはクレタ島でホテルを経営している。 そのホテルへ南仏から裕福そうな老夫婦がやって来て、失踪した娘セシリー・マクニールを探して欲しいと頼む。 セシリーの失踪は8年前の殺人事件に関係していると老夫婦は考えていた。

老夫婦が英国のサフォーク州で経営していた著名なホテル「ブランロウ・ホール」で客が殺害された。 殺人犯として逮捕されたのはホテルの従業員で終身刑となり服役している。 その事件を題材とした小説「愚行の代償」を作家アラン・コンウェイが書いており、その時の編集者がスーザンであった。 そのホテルを引き継いでいるセシリーは「愚行の代償」を読んで真犯人が他にいることに気付き、それが失踪に関係しているようだが、コンウェイは既に死亡しているので、スーザンに頼みに来たのだ。

依頼を引き受けたスーザンはブランロウ・ホールに赴き捜査を始めるが難航する。 そして、コンウェイの問題の小説「愚行の代償」を再び読み始める。 ここから、「愚行の代償」が挿入され、下巻の途中まで続く。 その小説の中では、エドワード・ヘア主任警部の協力を得て、私立探偵アティカス・ピュントが複雑な謎を解き、犯人を明らかにする。

「愚行の代償」の挿入が終わると、現実の事件に話は戻る。 「愚行の代償」の中ではピュントが見事に事件を解決していたが、スーザンの捜査は行き詰まる。 「愚行の代償」がどのように現実の事件のヒントになるのかも分からない。 さらに、雇い主からは契約解除を迫られ、猶予は1日半。 しかし、スーザンにひらめきが訪れる。

前作と同様、小説の中に小説が挿入されており、現実の事件と小説の事件がリンクする面白い作品だ。 (2022年9月30日)

殺しへのライン

元刑事のダニエル・ホーソーンと著者のアンソニー・ホロヴィッツのコンビが殺人事件を捜査するシリーズの第3作目。

本シリーズ1作目の「メインテーマは殺人」の刊行まで3ヶ月となり、その販売促進のため文芸フェスにホーソーンとアンソニーが出席することになる。 文芸フェスが開催されるのは、イギリス海峡の小島、オルダニー島。 アンソニーを始めとして数人の作家たちが招待されている。 出資者はオンラインカジノのCEO、チャールズ・ル・メジュラー。

長閑なオルダニー島だが、島民を二分する問題が起きていた。 電力会社がフランスとイギリスの間に送電線を敷く計画を立てており、その途中にオルダニー島を経由することが予定されている。 文芸フェスの最中、送電線の計画を推進していたチャールズが刺殺される。

多くの容疑者が浮かぶ中、ホーソーンはそれぞれの隠し事を暴きながら、殺人事件の真相に迫っていく。 (2022年11月27日)