読書メモ:東野圭吾

更新日:2023年04月07日
カテゴリー:読書 


透明な螺旋

天才物理学者、湯川学が警察に協力して怪事件・難事件のトリックを解くガリレオシリーズの第10巻。

南房総沖で漂流していた男の遺体の背中には銃で撃たれた傷があった。 そして、その恋人は行方不明。 推理小説では良くある設定だが、曰くありげな関係者がうまく配置されていて、謎を深めていき、飽きさせない。 そして、終盤ではしっかりと驚きを用意してくれている。

今回は湯川のプライベートがだいぶ明らかにされるのも特徴。 (2022年7月27日)

希望の糸

独身で四十路を迎える芳原亜矢子(よしはらあやこ)は金沢の料亭旅館「たつ芳」の女将。 ある日、肺癌を患い緩和ケアを受けている父の真次(まさつぐ)の遺言の内容を知るが、そこには腹違いの弟の存在が記されていた。 その弟は警視庁捜査一課の刑事、松宮修平(まつみやしゅうへい)。 真次はなぜ外に子供を作り、そしてその子供を残してたつ芳に戻ったのか? 亜矢子は松宮と会い、確かめようとする。

一方、松宮は、東京の喫茶店で殺された花塚弥生(はなづかやよい)の事件を捜査していた。 弥生はその喫茶店の経営者で、誰もが褒める人柄であったが、背中からナイフで刺殺された。 容疑者らしき人物はすぐに浮上したが、松宮はすっきりしない。

金沢の遺言と東京の殺人事件は独立して話は進むが、松宮を通して親子のあり様を考えさせる良い小説だった。 (2022年10月2日)

ラプラスの魔女

夫人と赤熊温泉に滞在していた映像プロデューサーの水城義郎(みずきよしろう)が硫化水素ガス中毒で事故死した。 事故の調査を依頼された大鵬(たいほう)大学教授の青江修介(あおえしゅうすけ)は現場近くで、自然現象を予測する不思議な力を持つ娘、羽原円華(うはらまどか)と出会う。 彼女は、事故の前に温泉に滞在していた木村浩一と名乗る青年を探していた。 そして、赤熊温泉の事故から2ヶ月後、今度は苫手温泉で中毒事故が起こり、俳優の那須野吾郎(なすのごろう)が亡くなる。 事故の検証を頼まれた青江はまた現場で円華と再会する。 連続する硫化水素ガスの中毒死の繋がり、円華と青年の関係が徐々に明らかになっていく。 (2023年3月25日)

魔力の胎動

ラプラスの魔女の登場人物が関係する短編集。

第1章から第4章までの主人公は本書のみで登場する鍼灸師の工藤ナユタ。 物理現象を予測できる羽原円華(うはらまどか)と出会い、引退の瀬戸際に立つスキージャンプ選手、捕球イップスにかかってしまったプロ野球のキャッチャー、水難事故に遭い植物状態になった息子を持つ高校教師、同性愛パートナーの死に悩むピアニストたちを助ける。

第5章は本書のタイトルにもなっている魔力の胎動。 主人公は、ラプラスの魔女での主要な登場人物である大鵬(たいほう)大学教授の青江修介(あおえしゅうすけ)。 ラプラスの魔女の3年前、排堀温泉村で起きた硫化水素中毒事故の調査を依頼され、助手の奥西哲子(おくにしてつこ)と共に現場へ向かう。 最後はラプラスの魔女へと続く。 (2023年4月7日)