読書メモ: マーク・グリーニー(伏見威蕃 訳)グレイマンシリーズ

更新日:2022年12月10日
カテゴリー:読書 


1 暗殺者グレイマン

グレイマン(ひと目につかない男)と呼ばれる元CIAの暗殺者コートランド・ジェントリーのシリーズの第1作。

自分のハンドラー(調教師)のサー・ドナルド・フィッツロイとその孫娘たちを救うため、待ち伏せる各国の特殊部隊戦闘員を倒していく。 というとだいぶB級な感じの小説に聞こえるが、話のテンポはよく、アクションの描写もしっかりしている。 暗殺者にしては良い人すぎる気もするけど。 (2021年12月2日)

2 暗殺者の正義

既読(2021年12月)

3 暗殺者の鎮魂

今回の敵はメキシコの麻薬カルテルの頭目、ダニエル・デ・ラ・ロチャ。 グレイマンの命の恩人であるメキシコ連邦警察特殊作戦群少佐のエデュアルド・ガンボアはダニエル暗殺を試みるが、逆に殺されてしまう。 ダニエルはさらにガンボアの家族をも狙う。 グレイマンはCIAに追われながらも、ガンボアの家族を守るために戦う。 (2021年12月)

4 暗殺者の復讐

CIAの依頼を受けた民間企業タウンゼンド・ガヴァメント・サーヴィスィズに命を狙われるグレイマン。 絶体絶命の状況で、CIAに同じような訓練を受けたデッドアイことラッセル・ウィトロックに命を助けられる。 デッドアイは敵か味方か。 イスラエルの情報機関モサドの目標決定官ルース・エディンガーが重要な役目を担う。 (2022年1月9日)

5 暗殺者の反撃

前巻で貸しを作ったモサドの協力で、米国に戻ったグレイマン。 「目撃しだい射殺」指令がグレイマンに対して出された謎を追う。

このシリーズは巻を追うごとに面白くなり、前巻を読んだ後はこれがきっと最高傑作だなあと思ったが、今回はその上を行ってた。 上下巻で構成され、分量も十分で読み応えがあった。

ところで、紙の本は電子書籍は違った楽しみがある。 読み進めるに連れて、左手で持っているページが薄くなると、いよいよ物語が終盤に近づいているなあと感じるのが良い。 (2022年1月16日)

6 暗殺者の飛躍

中国人民解放軍の優秀なコンピュータ・ハッカー、范講(ファン・チアン)は香港出張中に逃亡した。 中国の情報システムの弱点を知り尽くしている范を中国、ロシア、アメリカの情報機関が追う。 中国人民解放軍保全・防諜部部長の載龍海(タイ・ロンハイ)、ロシア対外情報庁統制官のゾーヤ・ザハロワ、そしてCIAの依頼を受けたグレイマン。 三つ巴の追跡劇がいつものように良いテンポで進む。 (2022年1月24日)

7 暗殺者の潜入

今回はパリとシリアが主な舞台。 アジアでの作戦終了後、ヨーロッパに潜伏していたグレイマンは、パリにある自由シリア亡命連合から、ファッションモデルの拉致を依頼される。 パリでの作戦は成功させたが、それはシリアでの赤ん坊と子守の救出にグレイマンを向かわせることになる。 (2022年1月30日)

8 暗殺者の追跡

前巻で登場したゾーヤ・ザハロワとその家族を中心にしてストーリーが展開する。 舞台はアメリカとイギリス。

イギリスでは、グレイマンが、偶然関わった容疑者輸送に端を発するロシアスパイとの戦いを続けている。 アメリカでは、ザック・ハイタワーによるCIAの内通者探しが行われており、それはイギリスへ波及する。 そして、父親の謎を探るゾーヤ・ザハロワはアメリカからイギリスに渡る。

イギリスに集まったグレイマン達の前で、アメリカ、イギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアのインテリジェンス・コミュニティの代表団が集まるファイヴ・アイズが開催されようとしていた。 (2022年2月9日)

9 暗殺者の悔恨

グレイマンの今回の敵は性的人身売買のコンソーシアム。 えぐい性的描写が多いので、爽快感は皆無。

プロットは雑で、これまでの巻よりグレイマンの心理描写を増やしているが、単純で浅いので安っぽく感じる。 終盤でグレイマンを助けるのが引退した年寄りの米軍兵士ってのも、アメコミっぽくていまいち。

このシリーズの中では最低かなあ。 (2022年2月19日)

10 暗殺者の献身

序盤はベネズエラで展開するが、今回の主な舞台はベルリン。 このシリーズでは街並みの描写がとてもリアルだが、著者は実際に調査しているのだろうか。

アラブ首長国連邦のスパイ組織SIAの作戦担当副長官スルタン・アル=ハブシーは、敵対するイランにダメージを与えるため、ベルリンである作戦を準備する。 そして、CIAの秘密プログラム、ポイズン・アップルのグレイマンとザック、ゾーヤ、そしてCIA作戦本部本部長のハンリーはスルタンの作戦を阻止するためにベルリンで行動する。 さらに、ゾーヤを狙うロシアの殺し屋チームもベルリンに入り、複雑な様相を示す。

前巻ではグレイマンの一人称での心理描写が加えられていたが、だいぶ違和感があった。 本巻ではそれがなくなり、いつものスタイルに戻っていて良かった。 構成やストーリーもよく練られていて、「暗殺者の反撃」に並ぶくらいの良い作品に仕上がっている。 (2022年3月4日)

11 暗殺者の回想

グレイマンと呼ばれる暗殺者、コートランド・ジェントリーの現在と12年前の話が交互に語られていく。

12年前は、ザック・ハイタワーの率いるCIA特殊活動部地上班シエラにジェントリーが新人として配属された頃の話。 主な舞台はアフガニスタン。 そこで、ジェントリーは情報班の下級戦術アナリストに採用されたばかりのジュリア・マルケスと出会う。 シエラが追うのはパキスタン軍統合情報局のムラド・カーン。 カーンは、高レベル放射性廃棄物から作った「汚い爆弾」によるテロを計画していた。

一方の現在は、ジェントリーがCIAから追われている頃の話。 情報・監視・偵察の新米専門家、インド人のプリヤンカ・バンダリとの仕事の最中に死んだはずのカーンを発見する。 カーンは新たな「汚い爆弾」をインドのムンバイで爆発させようとしていた。 (2022年12月10日)