読書メモ:フレデリック・フォーサイス(篠原慎 訳)

更新日:2022年08月09日
カテゴリー:読書 


ジャッカルの日

約30年くらいぶりに読み直したが、あいかわらず読みやすい。 ドゴール大統領を狙う暗殺者もそれを追う刑事たちもプロフェッショナルの仕事をする。 分野は全く違うが、自分もプロと名乗れる仕事をしようと思わせる一冊だ。 (2021年)

オデッサ・ファイル

舞台は1963年の西ドイツ。 若くして高い評価を得ているルポライターのペーター・ミラーは、おんぼろ下宿屋でガス自殺を図った老人ザロモン・タウバーの日記を入手する。 その日記には、第二次世界大戦中、ユダヤ系ドイツ人のタウバーが強制収容所で体験したナチス親衛隊(SS)によるユダヤ人の大量虐殺、特に「リガの屠殺人」と言われたエドゥアルト・ロシュマン大尉の非道が記されていた。 それを読んだミラーはロシュマンの行方を探し始める。

ドイツの敗戦が近いことを悟ったSSは密かにオデッサという組織を作った。 オデッサの任務は、SSの高級幹部たちを安全な海外に逃亡させたり、偽の書類を作ってドイツ国内に紛れ込ませることで、ロシュマンもオデッサの協力のもと、西ドイツで裕福に暮らしていた。 そして、書類の偽造を担当していたクラウス・ウィンツァーが自分の保身のため、これまでオデッサが匿ったSS将校たちの情報を記載したファイルを作っており、これが本書のタイトルになっているオデッサ・ファイルである。

公的機関からの協力を得られず調査が進まないミラーに、SSへの復讐に燃えるレオンのグループが近づく。 彼らの協力を得たミラーは単独オデッサに近づき、ロシュマンを追い詰めていく。

緻密な取材のもとに練られたストーリは飽きさせない。 そして、終盤はアクションもあり、最後には驚きも用意されている。

どこまでが事実で、どこからがフォーサイスの創作がわからないほど巧みに物語は進む。 フォーサイスの本領発揮の一冊である。 (2022年8月9日)