読書メモ:浅田次郎

更新日:2023年04月27日
カテゴリー:読書 


大名倒産

足軽の子として育てられた小四郎は、越後丹生山(にぶやま)三万石の大名、松平家第十三代当主となった。 と言うと、大変な出世話のように聞こえるが、実は丹生山松平家は積りに積もった25万両の借金に喘いでおり、先代のご隠居は前代未聞の大名の倒産を企んでいた。 そして、小四郎はその犠牲となるべく、家督をつがされたのであった。 しかし、小四郎は糞がつく真面目を武器に、二百年以上も続いた丹生山松平家を立て直すべく奔走する。

個性的な脇役がたくさん登場して話を盛り上げてくれる。 ただ、貧乏神や七福神などは余計だったような気がした。 (2023年04月27日)

流人道中記 上

流人は元直参旗本の青山玄蕃(げんば)、押送人は南町奉行所の見習い与力の石川乙次郎。 江戸から津軽の三厩(みんまや)までの片道一月にもおよぶ二人旅。 道中では当然様々な出会いがあり、物語がある。 旅籠屋の女主人、関所役人、按摩、懸賞首の大泥棒、賞金稼ぎの浪人、酒盛女、親の仇討ち行脚の侍。

ところで、青山の罪は、御定書百箇条の四十八、不義密通、すなわち不倫。 切腹を命じられるが、痛いのでイヤだと断り、奉行連中は大慌て。 紆余曲折があり、結局は松前伊豆守に永年御預となった。

一方の石川は、元々、お手先手鉄砲組(おてさきててっぽうぐみ)同心の次男坊、すなわち三十俵二人扶持の足軽の家の冷や飯食い。 しかし、剣術と学問が認められ、主人が卒中で倒れた与力の家へ婿養子に入った。 若いが堅物で、根が正直で堅物のため、新旧の家族のことであれこれ悩む日々。

その二人の道中日記。なかなか読み応えあり。 (2020年10月18日)

流人道中記 下

上巻の最後にたどり着いた仙台から話は始まる。 仙台藩主の陸奥守は青山玄蕃とかねてから昵懇の仲。 陸奥守にに請われて仙台に滞在中の一行は、町横目の阿部勘之丞(あべかんのじょう)、盗賊に騙されて主殺しの大罪で磔の刑にされる丁稚の亀吉と関わる。 さらに上巻の最後の方で出会った神林内蔵助の親の仇、雲水の佐藤伝八郎が加わり、話が進む。 結末はちょっと無理やりっぽいが、玄蕃の人柄でなんとなく納得させられる。 初めは玄蕃を切ることも考えていた石川乙次郎だが、玄蕃の思慮深さと優しさに心が解けてくる。

後半は宿村送りを中心に話が進む。 宿村送りとは、行き倒れた旅人が「生まれ故郷の水を飲んで死にたい」と言ったのなら、なんとしても送り届けなくてはならないという天下の定め、だそうな。 玄蕃と乙次郎は宿村送りの女、お菊に同行することになる。 一緒にお菊を送るのは一関領の代官、鈴木十蔵。そして、それを引き継いだ南部領の代官、及川次郎兵衛。 それぞれが抱えた悩みが旅の過程で語られる。

さらに、玄蕃の罪の真相も語られ、正義感の塊の乙次郎の憤りは高まる。 玄蕃の言い分にはツッコミどころ満載の気がするが、一つの解釈なのだろう。 いずれにせよ、最後はスカッとする良い終わり方だ。 (2020年10月28日)